大腸がんの薬物療法(化学療法)とは
公開日:2012.03.30更新日:2019.11.06
薬物療法の目的は大きく2つに分けられる
薬物療法とは、抗がん剤を使用する治療方法のことです。
抗がん剤には、がん細胞を死滅させる働きや、がんが進行するスピードを抑える働きがあり、飲み薬と注射薬の2つのタイプがあります。
薬物療法の目的は、大きく2つに分けられます。
1.手術後のがんの再発を防ぐための薬物療法(術後補助化学療法)
大腸がんを完全に治すための治療の原則は、手術でがんを完全に取りきることです。
手術で目に見えるがんを完全に取りきれた場合でも、目にみえない小さながん細胞が体内に残っている可能性があります。
このように体内に残った小さながん細胞が、再発の原因となります。
再発をできる限り防ぐために、手術後に抗がん剤を使用する治療を「術後補助化学療法(=アジュバント療法)」といいます。
術後補助化学療法を行うことが推奨されるのは、再発の可能性が高いステージ(病期)Ⅲの患者さんです。
また、ステージⅡの患者さんであっても、再発の可能性が高いと判断される場合には、術後補助化学療法を行ったほうがよいというのが、今の一般的な考え方です。
2.手術ができない場合や再発した場合(切除不能進行・再発の大腸がん)の薬物療法
手術で取りきることができないがんや再発したがん(切除不能進行・再発の大腸がん)に対して、抗がん剤を使用する治療です。
この治療は、がんが進行するスピードを抑え延命することを目的として行われます。
ほかの臓器への転移が起きているステージⅣの患者さんにおいて、転移の元となった大腸のがんだけでなく、転移した先の臓器のがんも治療の対象となります。
切除不能進行・再発の大腸がんに対する薬物療法の治療選択肢
切除不能進行・再発の大腸がんに対する薬物療法では、従来の抗がん剤に加え、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場し、薬物療法の選択肢が広がりました。治療法の選択にあたっては、効果と副作用のバランス、患者さんの希望やライフスタイル、遺伝子検査の結果などが考慮されます。
治療選択肢について詳しく知りたい方は、大腸癌研究会のサイトに掲載されている「大腸癌治療ガイドライン」を参照してください。
切除不能進行・再発の大腸がんに対する薬物療法の治療の流れ
切除不能進行・再発の大腸がんに対する薬物療法として、最初に行う治療を一次治療、その後に順次行う治療を二次治療、三次治療と呼びます。
治療が効かなくなった場合や、治療を続けるのが困難な副作用が現れた場合に、治療を切り替えて薬物療法を続けていきます。
カテーテルとポートを使った抗がん剤の治療
薬物療法の中には長時間の点滴注射が必要となる治療法もあります。
そのような場合でも、抗がん剤が入った携帯用ポンプを用いることにより、自宅で点滴を続けることができます。
まず、血管につながったカテーテルという管と、ポート(注射針を刺す部分)を胸か腕に埋め込むための比較的簡単な処置を行います。
このポートに携帯用ポンプをつなぐと、ポンプの中の抗がん剤が一定量ずつ注入されていく仕組みになっています。
抗がん剤の副作用
抗がん剤の影響はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも及ぶため、副作用が起きることがあります。
現れる副作用やその程度は、使用する抗がん剤によって異なり、個人差もあります。
強い副作用が現れた場合には薬の量を減らしたり、一時的に治療を休んだりすることもあります。治療を続けるのが困難な副作用が現れた場合には治療薬を変更することもあります。
ただし、近年、副作用を抑えたり、予防したりする薬(支持療法薬)の開発が進んできています。
また、患者さんが日ごろからセルフケアを行うことでも副作用の予防や症状の軽減が期待できます。主な副作用のセルフケアについてはこちらで紹介しています。
多くの抗がん剤でみられる副作用
分子標的治療薬でみられる副作用
- 高血圧
- 蛋白尿(尿にタンパクが混じる)
- 皮膚障害など
免疫チェックポイント阻害薬でみられる副作用
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
- 大腸炎など
抗がん剤ごとの副作用について詳しく知りたい方は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のサイトにある「患者向医薬品ガイド」を参照してください。
リンク先にある「患者向け医薬品ガイドの閲覧」から、抗がん剤ごとの副作用を調べることができます。