患者さん・家族の闘病記
公開日:2012.09.26
「絶対に大丈夫」と思い続けることができたのは、家族のおかげ
患者さん
- 青木さん(仮名)55歳
- 大腸がん発見時:52歳(2009年当時) ステージⅢb
大腸がんが見つかる前まで、健康状態はどうでしたか?
学生の頃は大きな病気もなく、健康児でした。30代後半に十二指腸潰瘍になったことはありましたが、それでも「自分は健康だけが取り柄で、大きな病気にはならない」という考えは変わりませんでしたね。もともと自己流の健康オタクで、食べ物には気をつかっていたし、テニスやスキーなど、運動も大好きでした。ただ、37歳で大腸にポリープができました。ポリープを取ったときに、「定期的に検査を受けたほうがいいですよ」とは言われていましたが、元気だったので、特に検査を受けていませんでした。
大腸がんが見つかった経緯を教えてください。
あるときから、食べ物を少し食べただけでお腹が張るようになって、ゆるいはずのズボンがきつく感じるようになっていました。肛門から出血もあったのですが、「まあ痔だろう」と思っていました。何かおかしいと思っても、がんだとは思いたくないという気持ちが働いていたのかも知れません。でもそのうちお腹が張って食事ができなくなってしまったんです。痔で物が食べられなくなるということはないはずと思い、病院で診てもらうことにしました。
どんな検査を受けましたか?
まずは血液検査を受けて、その数値に異常がみられたので、内視鏡検査をしていただきました。カメラを大腸に入れて、モニターに映ったものを見たときは「えっ、何これ?」という感じでした。大腸ポリープになったときには、そんな状態は見たことがなかったので、「これは多分がんなんだろうな」と思いました。私にはなんだかお花みたいに見えたその盛り上がりが、S状結腸にできたがんでした。がんが大きすぎて、カメラは途中までしか入りませんでしたね。
検査の後、先生からはどんなお話がありましたか?
手術前の診断では、ステージⅣの大腸がんだということを教えていただきました。ステージⅣがもっとも重い段階だということはなんとなく知っていたので、「あとどのくらい生きられますか?」と尋ねたと思います。「腸閉塞になるかもしれないから、今日、入院してください」と言われましたが、入院の用意を何もしていなかったので、「明日にしてください」とお伝えしました。
検査のつもりで行ったら「大腸がんです、入院してください」と言われ、驚かれたのではないでしょうか?
お話をうかがっていると、とても気丈に振る舞われていたように感じます。
びっくりしましたが、強がってしまう性格なのかもしれません。ただ、その日のことは記憶が飛んでいるところがたくさんあるので、気丈なふりをしていても、実際には頭の中は真っ白だったと思います。
ご家族には、どのようにお伝えされましたか?
入院用のパジャマを買いに行くときに、姉と弟に電話で「がんが見つかって、入院するから」と伝えました。「全然たいしたことない。私は大丈夫だよ」というふりをしながら、電話をかけた記憶があります。でも、頭が真っ白だったので、会話の内容はまったく覚えていません。二人とも近くに住んでいるので、すぐに飛んできてくれました。ただ、父には心配をかけたくなくて、自分から直接伝えることは、どうしてもできませんでした。父は私の大腸がんのことを、姉から伝え聞いたと思います。職場には、入院する事情を電話で伝えました。
手術を受ける前の気持ちを教えてください。
最初のうちは「もう、そんなに長くは生きられないかもしれない」という思いが、いつも頭のどこかにありましたね。でも「父より先に逝くような親不孝はできない」という思いが強くなって、「私、絶対に大丈夫」と考えるようになりました。
手術はどのように行われましたか?
手術を受ける前に姉と弟に同席してもらい、説明を受けました。手術自体はけっこう長かったようで、7時間ぐらい。がんは全部きれいに取れたと聞きました。手術後は痛いし、気持ちが悪いし、歩けないし、熱も出るし、一番具合が悪かった時期でしたね。手術の後は普通の食事はとれず、点滴とスポーツドリンクで過ごしていました。手術後の診断では、がんはステージⅣではなく、ステージⅢbだとわかりました。手術の1週間後に退院しましたが、退院する頃に外科の先生から「再発を防ぐために、化学療法をやったほうがいい」と言われました。
手術でがんを取ったら、それで治療は終わりだと思っていたのではないでしょうか?
ええ、思っていました。でも、信頼する外科の先生からの勧めということもあって、素直に化学療法の先生にお話を聞きに行きました。それに、「やれることを全部やらずに後悔するのは嫌だ」という思いがありましたね。