大腸がんの治療中の食事・レシピ
監修:千歳はるか 先生
国立がん研究センター東病院 栄養管理室長
公開日:2021.03.15
がん治療と食事
「食べること」は必要な栄養やエネルギーを摂取するためだけではなく、おいしいものを食べる楽しさや喜びでもあります。
しかし、大腸がんの手術や抗がん剤治療の影響で、食事が思うように摂れないといった方もいらっしゃると思います。
そのような時は、「食べられるときに、食べられるものを、食べられるだけ」を意識するとよいでしょう。
ここでは、がんの治療中の食事ではどのような工夫をすれば食べやすくなるのか、どのようなことに気を付けるとよいのか、どのような料理があるのか、といった悩みにお応えするために、「がん治療中の食事のアドバイス」や「症状別のレシピ集」を紹介していますので、毎日の食事の参考にしてみてください(副作用のセルフケアについてはトピックスをご覧ください)。
がん治療中の食事のアドバイス
以下のアドバイスを参考に、ご自身にあった方法を取り入れてみてください。 なお、食品などの具体例は代表的なものを掲載していますので、病院での説明と異なる部分やよくわからない部分があった場合には、病院の医療スタッフに相談してみてください。
大腸がんの手術後(消化不良)
基本的に食事制限はありませんが、手術後1~3ヵ月くらいの間は、消化の良い食品を、ゆっくり、よく噛んで食べるようにしましょう。また、一度に食べすぎないようにしましょう。
抗がん剤の副作用(下痢、便秘、貧血、吐き気や食欲不振、口内炎、味覚・嗅覚の変化)
下痢
- 胃腸の負担になる食品(脂っこいもの、辛いものなど)を避けましょう
- 温かく、消化の良い食品を中心に食べましょう
- ゆっくり良く噛んで食べるようにしましょう
- 下痢によって体の水分が失われますので、脱水症状にならないよう、こまめに水分補給をしましょう
便秘
- 不溶性と水溶性の食物繊維をバランスよく摂取しましょう
・ 不溶性食物繊維を多く含む食品
繊維の固い野菜(ごぼう*、たけのこ、れんこんなど)、さつま芋、きのこ類、豆類、乾物(玄米、ライ麦、切干大根など)
* 不溶性だけでなく、水溶性食物繊維も多く含まれています
・ 水溶性食物繊維を多く含む食品
果物、繊維のやわらかい野菜(にんじん、ほうれん草、大根など)、芋類(じゃが芋、里芋、長芋など) - 水分を積極的に摂りましょう
- 腸内環境を整える乳酸菌食品(ヨーグルトなど)を摂取するとよいでしょう
貧血
- たんぱく質が不足しないようにしましょう
- 鉄分の豊富な食品(レバーやあさりなど)を取り入れましょう
- 鉄分の吸収を高めるために、ビタミンC(果物(特に柑橘類)、野菜に多く含まれます)も同時に摂るとよいでしょう
吐き気や食欲不振
- 量を控えめにし、数回に分けて食べましょう
- 体調の良い時間帯に食べましょう
- いつでも食べられるよう食べやすいものを準備しましょう
- 消化の良い食品を中心に食べましょう
- さっぱりと食べられる、口当たりの良いものを選びましょう
- くさみを消したり、冷ましたりして、においを抑えるとよいでしょう
口内炎
- 口腔粘膜に刺激となる食品(酸っぱいもの、辛いもの、濃い味付けのものなど)を避けましょう
- 簡単につぶせるくらい、やわらかく調理しましょう
- 水分の多いなめらかな料理を選びましょう
味覚・嗅覚の変化
- ご自身の症状に合わせて、味付けや調理法を工夫してみましょう
- 口腔内の乾燥がある場合は、汁物などを添え、なめらかな料理を選びましょう
- スプーンなど金属製の食具で苦味を感じる場合は、プラスチック、木製、陶器などに変えてみましょう
がん治療中の食事に関するQ&A
積極的に食べたほうがよいもの、控えたほうがよいものはありますか?
病院から特別な指示がない場合は、積極的に食べたほうがよいもの、控えたほうがよいものはありません。ご自身の症状に合わせて、バランスよく食事をすることが大切です。ただし、抗がん剤の中には食事の影響を受けて効果が弱くなったり、副作用が現れやすくなったりするものもありますので、医師や薬剤師の指示に従ってください。
食欲がなく、食事があまりとれません。どうすればよいでしょうか?
一日三食にこだわる必要はありません。間食を取り入れるなど、食事の回数を増やしてみましょう。また「食べられるときに、食べられるものを、食べられるだけ」を意識し、無理をせず、体調に合わせた食事をするとよいでしょう。少量で効率よく栄養を補える栄養補助食品もありますので、医師、看護師、栄養士などと相談しながら取り入れてみましょう。
一人分の食事を用意するにはどうすればよいでしょうか?
以下のような方法を参考にしてみてください。
- 途中までご家族の料理と一緒に調理し、味付けの段階でわける
- 調理時にはあまり味をつけず、食べるときに調味料で調整する
- まとめて作り、小分けにして冷凍保存しておく
- シリコン調理器や電子レンジ対応調理器具を活用する
- 宅配弁当や市販のレトルト食品・缶詰などを利用する
症状別のレシピ集
具体的にどのような料理をつくったらよいのか迷うこともあるかと思います。そのときは以下のサイトを参考にしてみてください。症状や材料別にレシピを見ることができます。
実際に作るうえで不安なことやわからないことがあった場合は、治療を受けている病院の医師や看護師、栄養士などに相談したり、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターに問い合わせたりしてみましょう。