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HOME  >  医療従事者インタビュー  >  患者さんへのアドバイスと、治療と仕事を両立した患者さんの事例 加藤先生 林さん(2)

医療従事者インタビュー

公開日:2019.01.21

がんと診断されても仕事を続けるために知っておきたいこと

目次

“早まって仕事を辞めないで”を合言葉にしています。

患者さんに、治療と仕事を両立するためのアドバイスはありますか?

多くの患者さんに共通したアドバイスを挙げると、表のようになります。もちろん、具体的な状況は個々人で異なりますので、両立支援相談窓口やがん相談支援センターなどの窓口に相談されることをお勧めします。

治療と仕事を両立するための6つのアドバイス

  • (1)大きな決断(退職)を急がない
  • (2)一人で抱え込まず、主治医、看護師、医療ソーシャルワーカーなどに相談する
  • (3)病状・治療の見通しを理解する
  • (4)治療が仕事に与える影響を整理する
  • (5)職場で配慮してほしいことを整理する
  • (6)職場の就業規則や公的助成・支援制度を確認する

 

一番大切なことは、大きな決断を急がないこと、そして一人で抱え込まずに誰かに相談することです。そのため、当院では“早まって仕事を辞めないで”を合言葉にしています。がんの診断を受けて混乱し、今後のことが見えない状況のなかで退職せざるを得ないとおっしゃる場合には、まずは治療のことを優先し、仕事については決断を急がず少し先延ばしにしてはどうかともお伝えしています。

加藤

がん治療を受けながら仕事をするためには、職場に何らかの配慮をお願いする場合があります。そのためには、ご自身の病状や治療の見通しなどを把握し、さらに治療が仕事に与える影響について整理し、職場の人に状況を的確に説明することが必要です。そのうえで、治療を受けながら仕事をするため、「2週に1度は病院で治療を受けるので、その日は休ませてほしい」といったように、職場で配慮してほしいことを具体的に伝えましょう。

写真:林さん

また、企業に治療と両立するために利用できる社内制度がすでに備わっているか、就業規則を確認しておきましょう。具体的には有給休暇の取得制度をはじめ、休業制度、休業時給与保証制度、時短制度、フレックス勤務、自宅勤務などです。公的助成・支援制度としては、高額療養費制度、限度額適用認定証、人工肛門を造設した場合の身体障害者手帳などがあります。これらの制度を最大限に利用することは、治療と仕事の両立において重要です。

実際に、治療と仕事を両立している大腸がん患者さんがいらっしゃいます。

東京労災病院でご経験された両立支援の事例を教えてください。

事例 1:入院中は離職を考えていたものの思いとどまり、復職した70歳代男性

重機オペレーターをされている70歳代男性の方で、大腸がんの手術直後にお声がけさせていただきました。ご本人は、医療費に不安はあるが、働けるかどうか自信はなく、職場に迷惑をかけてしまうのではないかと復職には消極的でした。入院中は弱気になりますので、「退院後、様子を見てから考えてはいかがですか」と離職の決断を先延ばしにするようにお伝えしました。
退院後、外来で会った際には、体調も回復したこと、主治医が十分に働けるとお伝えしたこともあって、「がん患者だし手術をしたら働くことはできないと思っていたけど、体調も回復して働けるかもと思った」と、復職に意欲を示されました。職場にはご自身の病状をはっきりと伝えられたようですが、職場からもその方の経験や技術が必要とされ、復職を歓迎してくれたということでした。その後、試しに数日間出勤してみて「これなら続けられそう」と実感されたようで、そのまま復職されました。その直後に薬物療法が開始され、だるさといった体調の変化が現れて、気持ちがさまざまに揺れ動きながらも仕事は続けられていました。「辞めようと思うこともあるけど、やっぱり仕事は魅力的なんだよね」といきいきとおっしゃる様子が印象的でした。

事例 2:副作用に悩みながらも、治療も仕事も継続している50歳代男性

50歳代男性で、2週ごとの薬物療法のために通院をしながら自営業のクリエイターの仕事を継続されている方がいらっしゃいます。
両立支援相談窓口には、薬物療法の副作用である手足のしびれを訴えて相談に来られました。特に手のしびれは仕事でのパソコン操作にも影響していたため、医師や看護師に情報共有し、対応を検討してもらいました。「手のしびれは大変だなあ」とおっしゃっていましたが、それでも「仕事を続けることで病気になる前と同じ生活ができるというのはやっぱり良いな」と廃業することは考えなかったようです。この方は、クライアントの依頼に応えることにやりがいを感じていらっしゃるようで、今でも治療を受けながら仕事を続けていらっしゃいます。

がんと診断されたら、一人で抱え込まないでまず相談してください。

最後に、治療と仕事の両立に悩んでいる患者さんとそのご家族に向けてメッセージをお願いします。

加藤

がんと診断され、これからどうすれば良いのか困ったときには、まずは誰かに相談を持ちかけてください。医師や看護師、医療ソーシャルワーカーなどの医療スタッフでも、がん相談支援センターなどの相談窓口でも構いません。必ず患者さんの力になってくれると思いますので、一人で抱え込まないで相談してください。

どんなことでも構いませんので、分からないことや不安なことがあれば納得できるまで医療スタッフに聞くようにしてください。医療スタッフ以外に相談できるところとして、がん相談支援センターをはじめ、両立支援を行っている病院や産業保健総合支援センターなどがありますので、ぜひご利用ください。

相談窓口を調べる際には、以下のサイトが参考になります。

【お話をうかがった方】

東京労災病院 治療就労両立支援センター

加藤 宏一先生

医師
加藤 宏一先生

札幌医科大学 卒業
日本脳神経外科学会指導医
労災補償指導医 など

林 恵子さん

医療ソーシャルワーカー(社会福祉士・精神保健福祉士)
林 恵子さん

明治学院大学社会学部社会福祉学科 卒業
両立支援コーディネーター

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当ウェブサイトは、大腸がんやその治療法などに関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法などを推奨するものではありません。病状や治療法などに関しての判断は、担当医またはかかりつけの医療機関にご相談ください。