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HOME  >  医療従事者インタビュー  >  精密検査ってどんなことをするの?内視鏡検査の流れと注意点 堀田欣一先生(2)

医療従事者インタビュー

公開日:2018.03.12

大腸内視鏡の専門医に聞いた、大腸がんを早く見つけるためにすべきこと

目次

精密検査では内視鏡を使った検査が行われます。

精密検査ではどのような検査を行うのでしょうか?

全大腸内視鏡検査が第一選択となります。この検査では、内視鏡を肛門から挿入し、肛門から盲腸まで大腸すべてを観察します。

図:大腸の絵

全大腸内視鏡検査は精密検査の中で大腸がんを発見できる確率(感度)が最も高い検査とされ、早期の大腸がんも含めると、95%以上の大腸がんを発見することができるとされています。つまり、この検査で大腸がんが見逃される可能性は低いといえるでしょう。

*出典:『有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン』

全大腸内視鏡検査にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

便潜血検査はあくまで腸管からの出血の有無を調べる検査ですので、出血の原因となっている病気まではわかりません。それに対して、全大腸内視鏡検査は大腸を内視鏡で直接見る検査ですので、はっきりとしたことがわかることがメリットです。病変が見つかったら、内視鏡を使って組織を採取し、良性なのか悪性なのかをより詳しく検査することができますし、放っておくとがん化する可能性がある大腸腺腫や早期のがんを切除できる場合もあります。

このように、全大腸内視鏡検査を受けることで診断や、場合によってはその場で治療も行うことができます。

全大腸内視鏡検査にデメリットはありますか?

検査のデメリットとして、偶発症(偶発的に起こる合併症)の可能性があります。例えば、検査で使用する下剤や鎮静剤などの薬による副作用が現れることがあります。また、内視鏡を挿入したときに腸管を傷つけて、穿孔(せんこう:腸に穴が開くこと)などが起こる可能性があります。しかしいずれの偶発症も起こる確率は非常に低いですし、万が一これらの偶発症が起こっても、病院では対処できるように準備しています。

全大腸内視鏡検査はまったくデメリットのない検査というわけではありませんが、便潜血検査が陽性の方にとっては大腸がんの早期発見・早期治療につながるという、デメリットをはるかに上回るメリットがあります。

便潜血検査で陽性であっても、精密検査を受けない方もいらっしゃると思います。そのような方に対して、先生はどのようにアドバイスをされますか?

「自分はがんにならないと思う(健康だから大丈夫、自覚症状がない、がん家系じゃない、など)」
大腸がんの症状が出てくるのは進行してからだといわれています。健康で症状がないとしても、陽性だったのは何か病気のサインかもしれません。また、大腸がんの原因とされるものにはさまざまありますので、がん家系でないからといって大腸がんにならないわけではありません。
「忙しくて検査を受ける時間がない」
進行してから大腸がんが見つかると、治療などの負担が大きくなり、日常生活に支障が出る場合があります。あのとき受けていればと後悔しないためにも、ここで精密検査を受ける時間をつくりましょう。
「2回の便潜血検査のうち陽性は1回だけだった」
大腸がんであったとしても常に出血しているわけではないため、2回行って精度を上げているのです。1回でも陽性なら、腸管から出血していると考えられますので、精密検査を受けましょう。
「下剤を飲むのが大変そう」
人によって好みがありますが、下剤の種類が増えているので、それほど苦労せずに飲めるものもあると思います。検査前日の食事も含めて主治医に相談してみるのが良いでしょう。
「精密検査は苦しそう」
鎮痛剤や鎮静剤を使って苦痛や負担を和らげることができます。また、当院での経験上、8~9割の方は苦痛を感じていません。
「検査に時間がかかりそう」
実際に内視鏡を入れている時間は、見つかった大腸腺腫をその場で切除する場合でも平均で30分程度です。
「検査を受けるのが恥ずかしい(お尻をみられたくない)」
担当医師が同性となるよう配慮してくれる病院もあります。また、スタッフに頼めば恥ずかしくないように工夫してくれるでしょう。
「がんが見つかるのが怖い」
「がんになったら死んでしまう」といった先入観があるのかもしれません。ですが、大腸がんは早く見つかれば、負担の少ない治療で治癒できますので、怖いと思う方こそ精密検査を受けましょう。
「痔だから便潜血検査が陽性になったと思う」
確かに痔の場合、便潜血検査が陽性になることがあります。しかし、自己判断して精密検査を受けないと大腸がんを見落とすことにもつながりかねません。症状のある方は保険診療で検査を受けられますので、自己判断せず、医師に相談してみましょう。
「以前の精密検査で問題なしといわれた」
以前の検査から数年経過しているのであればもう一度受けることを勧めます。ただ状況にもよりますので、まずは医師に相談するべきでしょう。

精密検査(全大腸内視鏡検査)の流れ

全大腸内視鏡検査はどのような流れで行われるのでしょうか?

ここでは一般的な流れを紹介します。なお、病院や診療内容によって異なるところもあります。食事制限や下剤は腸の中をきれいにし、内視鏡でしっかり観察できるようにするためのものですので、実際に受けられる際は自己流にアレンジせず、それぞれの病院の指示に従ってください。

全大腸内視鏡検査の流れ
(一般的なものを示しています)

検査前日
  • 食事は消化の良いものを中心に、控えめにしましょう(検査用の食事が用意される場合もあります)
  • 早めに就寝しましょう
検査当日:病院へ向かうまで
  • 下剤を飲み、腸を洗浄します(病院で飲む場合もあります)
  • 食事はしてはいけません
  • 指定された飲み物だけとりましょう
  • 着替えやすい服装で病院に向かいましょう

検査当日:病院にて
  • 腸の動きを抑える薬や鎮静剤、鎮痛剤などを注射することがあります
  • 内視鏡で大腸(肛門~盲腸)を観察します
  • 病変が見つかった場合は、組織の採取や病変の切除を行うこともあります
  • 30分程度で検査は終了します

検査終了後
  • 検査が終わった後は少し休みます
  • 気分が悪いなど、いつもと違うことを感じたら医師に伝えましょう
  • 検査結果の説明を受けます(組織を採取した場合などは、説明が後日になることもあります)
  • 飲食は1時間後から可能です(内視鏡で治療を行った場合は、検査後1週間ほどは飲食について指示されることがあります)

最後に、検診の対象となる方とそのご家族へのメッセージをお願いします。

大腸がんは、早く見つけることができれば治癒する確率が高くなります。また、便潜血検査と全大腸内視鏡検査には大腸がんによる死亡率を低下させる効果が認められています。つまり、大腸がん検診、そして精密検査を受けることは長生きにつながるといえます。ですので、40歳以上の方は、大腸がん検診を年に1回受けましょう。そして便潜血検査の結果が陽性なら、必ず精密検査(全大腸内視鏡検査)を受けましょう。発見が早いほど治療の負担は軽くてすみますし、検査と同時に治療できる場合もあります。もし何もなかったとしても、検査を受けたことで安心して過ごすことができます。
現状、日本における大腸がん検診や精密検査の受診率は決して高くありません。ご家族や親しい人で受けていない方がいたら、検診・検査の受診をぜひ勧めてください。

私たち医療スタッフは患者さんが楽に検査を受けられるように最大限の配慮をしていますので、心配しすぎず検査を受けてもらえればと思います。

【お話をうかがった先生】

静岡県立静岡がんセンター
内視鏡科医長
堀田欣一先生

京都府立医科大学 卒業
日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医、学術評議員、支部評議員
日本内科学会 内科認定医、総合内科専門医、指導医
日本消化器病学会 専門医、支部評議員 など

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当ウェブサイトは、大腸がんやその治療法などに関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法などを推奨するものではありません。病状や治療法などに関しての判断は、担当医またはかかりつけの医療機関にご相談ください。