医療従事者インタビュー
公開日:2018.03.12
大腸内視鏡の専門医に聞いた、大腸がんを早く見つけるためにすべきこと
静岡県立静岡がんセンター
内視鏡科医長
堀田欣一先生
大腸がんは早く見つかれば治癒する確率が高く、治療の負担も軽くてすみます。早く見つける方法としては大腸がん検診があり、40歳以上の方は年に1回検診を受診すること、検診の結果が陽性なら精密検査(全大腸内視鏡検査)を受診することが厚生労働省により勧められています。今回は、大腸がん検診の大切さ、精密検査の流れと注意点について、静岡県立静岡がんセンター内視鏡科の堀田欣一先生にお話をうかがいました。
目次
- 1.便潜血検査で陽性といわれたらどうすればいいの?
- 2.精密検査ってどんなことをするの?内視鏡検査の流れと注意点
大腸がんは早く見つかれば、治癒する確率が高く、負担の軽い治療ですみます。
先生が所属されている内視鏡科(大腸部門)では、どのような診療をされているのでしょうか。
大腸を中心に、小腸も含む下部消化管について内視鏡を使った検査・診断・治療を幅広く行っています。例えば、便潜血検査(べんせんけつけんさ)で陽性だった方への精密検査も行っていますし、かかりつけの医院や病院から紹介された方に対する内視鏡治療も行っています。診療しているのは大腸がんだけでなく、大腸腺腫(だいちょうせんしゅ:良性のポリープ。ポリープが大きいとがん化する可能性が高くなるため、切除する場合がある。)なども含まれています。
大腸がんは早く見つけることが大切といわれますが、それはどうしてですか?
大腸がんの発生の仕方には2つあると考えられていて、1つは粘膜にできた大腸腺腫のうちの一部が、がん化する場合、もう1つは粘膜から直接がんが発生する場合です。大腸がんの多くは前者によるものと考えられており、進行は比較的緩やかであるとされています。そのため、他のがんと比べて、早期のうちに発見できるチャンスが多いがんともいえるのです。
早期の大腸がんの段階で見つかれば、治癒する確率は当然高くなりますし、負担の軽い治療ですみます。だから、“大腸がんは早く見つけることが大切”といわれるのです。
便潜血検査で陽性だったら精密検査を受けて、早期発見のチャンスを逃さないこと。
どうすれば早く大腸がんを見つけることができるのでしょうか?
早期の大腸がんでは自覚症状がないことが多いため、早く見つけるためには大腸がん検診を受けることが大切です。大腸がんになる方が増え始める40歳以上になると、お住まいの市区町村で住民検診が受けられますし、企業に勤めている方は職域検診として、職場でがん検診を受診できる機会も用意されている場合があります。
大腸がん検診では、はじめに便潜血検査を行い、陽性と判定された場合には、精密検査でより詳しく調べて大腸がんかどうかを診断します。
なお、検診は症状がない方が対象となります。すでに血便が出るなど症状がある場合には保険診療で検査を受けられますので、検診ではなく、病院を受診しましょう。
便潜血検査が陽性だったら大腸がんなのでしょうか?
便潜血検査が陽性だった方から大腸がん(早期も含む)が見つかる確率は約4%とされており、放っておくとがん化する可能性がある大腸腺腫などの病変が見つかる確率は約70%と言われています*。つまり便潜血検査が陽性であっても大腸がんとは限りませんが、治療を要するような何らかの病気である可能性が高いと考えられます。
もしかすると、便潜血検査で陽性だったのに、忙しいなどの理由で精密検査を受けられなかったという方もいるかもしれません。たとえ時期が遅れてしまっても、受けられるタイミングで精密検査を受診することが大切です。
一方で、便潜血検査が陰性だったとしても「大腸がんではない」とは断言できせん。大腸がんは常に出血しているわけではないので、大腸がんであるにも関わらず陰性と判定されてしまう偽陰性(ぎいんせい)の場合もあるためです。そのため、陰性と判定された場合でも検診を毎年受けることが大切です。
*出典:日本消化器がん検診学会全国集計委員会『平成26年度消化器がん検診全国集計』
便潜血検査の結果だけでは大腸がんかどうかは判断できないということですね。
このように聞くと、便潜血検査を受診してもはっきりしたことはわからないのであまり意味がないのではないかと思われるかもしれません。しかし、便潜血検査はトイレの際にご自身の便の一部を採ってきてもらうだけですので、非常に簡単で体への負担はありません。そのうえ、検査にあたり食事や薬の制限などはなく、検査費用は一般的に1,000円以下ということから、40歳以上という膨大な人数の中から大腸がんの可能性が高い方を見つけるという目的には適した有用な検査なのです。
どのがんも早く見つけることが大切ですが、特に大腸がんの場合は検診を受けて早期発見のチャンスを逃さないようにすることが大切です。そして検診でもし陽性だったら、必ず精密検査を受けてください。