患者さん・家族の闘病記
公開日:2017.01.12
意思表示が、治療と仕事の両立のカギ
患者さん
- 内山さん(仮名)64歳男性
- 大腸がん発見時:58歳(2010年当時) ステージⅢb
大腸がんが見つかった経緯を教えてください。
会社の健康診断の際に、検便(便潜血検査)を受けたことがきっかけです。検便の結果が出た後に、問診で医師から「痔かもしれませんが、念のため検査を受けたほうが良いでしょう」と言われ、内視鏡検査を受けることになりました。
何か症状はありましたか?
実は便潜血検査を受ける前から、血便や細い便が出るという症状はありました。それらが大腸がんの症状として出ることがあるというのも知っていましたが、両親からがん家系ではないと言われていたので、自分はがんではないと思っていました。内視鏡検査を受けに行くことが決まってからも、会社の人たちには笑いながら「お尻を見られるなんて嫌だよ、恥ずかしいよ」と話していたほどです。
内視鏡検査を受けて、大腸がんと診断されるまでの様子を教えてください。
ポリープぐらいはできているかもしれないので、検査の最中に切られて痛い思いをするのを覚悟していましたが、なんの痛みもなく、検査は想像よりも早く終わりました。検査が終わってすぐに見せていただいたカラー写真には、黄色がかったものの上に赤い斑点がありました。「先生、このスイーツのようなものは何ですか?」と聞くと、返ってきた答えは「あなたの腸の中を写した写真で、これはがんですよ」というものでした。がんというのは、イボのような見た目を想像していたこともあり、このときはさすがに「えっ?」と驚きました。「初期ですよね?」と聞くと、「進行しています」と言われました。
大腸がんと診断されて、どんなことを考えましたか?
自分はどうなってしまうのかということはあまり意識しませんでした。それよりも、思い浮かんだのは仕事のことと、家族のことでした。私は会社で経理部長を務めており、そのときはちょうど、年末の決算で忙しい時期でした。大腸がんと診断されたその日も、会社に戻って仕事をする予定でした。健康診断の一環として受けた検査の結果を、会社に報告しないわけにもいきません。会社に戻る電車に揺られながら、どう伝えようかと悩み、戻ってからも上司に話を切り出すタイミングがなかなかつかめませんでした。それでもその日の帰り際に上司に伝えました。普段と変わらない様子で仕事をしていた私から、突然がんだと告げられて、上司も内心ではとても驚いていたと思います。
ご家族にはどのように伝えたのですか?
家族にも迷惑をかけたくなかったので、妻と二人の娘にどのように伝えれば良いか、やはり悩みました。娘は二人ともすでに成人して自立していますし、負担はかけたくないですからね。会社から帰って妻に伝えると、ショックは受けていたと思いますが、気丈に振る舞ってくれました。娘たちには、妻から話をしてもらいました。みんないつもどおりに接してくれていましたが、言葉には出さなくても、心配していたんじゃないかと思います。
手術前後の状況を教えてください。
大腸がんと診断されてから手術を受けるまで10日間ぐらいありましたが、その間にいくつかの検査を受けました。私は手術で、上行結腸の途中から下を、盲腸も含めて切除しました。今は特に食事制限はありませんが、手術後は「腸閉塞になるかもしれないので、はじめのうちは柔らかいものを食べてください」と言われました。
手術のための入院期間は、数週間だったと思います。
手術の後は、何か治療を行いましたか?
ステージⅢbでしたので、手術後に6ヵ月間の抗がん剤治療(術後補助化学療法)を受けることになりました。飲み薬の抗がん剤も選べると言われましたが、私は性格上、薬の飲み忘れをしてしまうことがあるので、点滴で投与してもらう方法を選びました。
術後補助化学療法を行うと聞いてどんなことを思いましたか?
「抗がん剤の副作用で頭髪が抜ける」という印象があったので、「それは嫌だ!」と思いました。病院内のがん相談支援センターに、かつら(ウィッグ)のカタログが置いてあったので病室で読んだりしました。主治医の説明を聞いて、実際には脱毛が起きやすい抗がん剤と起きにくい抗がん剤があることを知りました。また幸いなことに、私が使用した抗がん剤はそれほど脱毛が起きないものでした。抗がん剤には多くの種類があり、それぞれに副作用があるので、どんな些細な心配でも、まずは主治医に相談するのが一番ですね。
術後補助化学療法を行っている中で、大変だったことはありましたか?
食欲が出なかったことですね。気分が悪くなったり、めまいを感じたりしていたこともその原因だったと思います。そのようなときは無理に食べず、すりおろしたリンゴなどの口当たりの良いものを、少量食べていました。