大腸がんQ&A
監修:佐藤 温 先生
弘前大学大学院医学研究科 腫瘍内科学講座 教授
公開日:2019.04.15更新日:2022.09.30
治療法の選択・決定
薬を使う前に効果や副作用を予測することはできますか?
遺伝子検査などによって薬の効果や副作用を予測できる場合があります。
大腸がんの薬物療法において、遺伝子検査が薬の効果や副作用の予測に使われている例をいくつかご紹介します。
- 分子標的治療薬の中には、RAS(ラス)という遺伝子に異常(変異)があると効果が期待できないものがあります。そのため、切除不能な大腸がん(手術で取りきることができないがんや再発したがん)の治療法を決める際に、RAS遺伝子に変異があるかどうか検査するのが一般的です。もしRAS遺伝子に変異があった場合は、別の薬を用いた治療法を検討することになります。このRAS遺伝子の検査によって、特定の分子標的治療薬が患者さんに効果的かどうかを予測できるため、無用な治療を回避することにつながります。
- 分子標的治療薬の中には、BRAF(ビーラフ)という遺伝子に変異が認められる場合に、効果が期待できるものがあります。そのため、RAS遺伝子の検査と一緒に、BRAF遺伝子に変異があるかどうかを検査することもあります。BRAF遺伝子に変異が認められた場合、特定の分子標的治療薬を用いた治療法が検討されます。
- 分子標的治療薬の中には、がん細胞にHER2(ハーツー)タンパクというタンパク質がたくさんある(これをHER2陽性といいます)と効果が期待できるものがあります。そのため、特定の分子標的治療薬を使った治療を行うかどうか決める際にHER2検査をします(ただし、現時点ではHER2陽性の大腸がんの方みなさんに使用できるわけではありません)。
- 抗がん剤の中には、UGT1A1(ユージーティーワンエーワン)という遺伝子に変異があると、副作用が強く出る可能性があるものが知られています。そのため、特定の抗がん剤で治療を行う前に、UGT1A1遺伝子に変異があるかどうか検査することがあります。このUGT1A1遺伝子の検査によって、副作用が出やすい体質かどうかがわかるため、体質に応じた対処を行うことで、より安全に治療を行うことができます。
- 免疫チェックポイント阻害薬の中には、MSI-High(エムエスアイハイ:高頻度マイクロサテライト不安定性)という性質が遺伝子に認められる場合に、効果が期待できるものがあります。そのため、特定の免疫チェックポイント阻害薬を使った治療を行うかどうかを決める際にMSI検査※をします(ただし、現時点ではMSI-High大腸がんの方みなさんに使用できるわけではありません。詳しくは免疫チェックポイント阻害薬に関するQ&Aをご参照ください)。
このように、遺伝子検査などによって薬の効果や副作用を予測できる場合があります。
- ※MSI検査は遺伝性の病気であるリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)の補助診断にも用いられます。このことについても十分に説明を受けたうえでMSI検査を受けるかどうかを決める必要があります。
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