医療従事者インタビュー
公開日:2012.07.20更新日:2016.04.14
大腸がん治療について悩みを抱えている方へ
目次
- 1.がんの化学療法を行う自分自身が、2度もがんに
- 2.術後補助化学療法を始める前から心配しすぎないで
- 3.治療中の悩みは、一人で抱え込まずに相談を
患者さんの立場で、治療をやりとげるポイントは何でしょうか?
術後補助化学療法は、最大限の効果を得るために、とにかく最後までやりとげることが大切です。そのためにも、患者さんにはいつも「あまり一人で抱え込まないでね」と言っています。つらい症状があっても、例えば吐き気があれば、吐き気止めなどで軽くすることができますから。「僕たちと一緒に頑張りましょう」ということです。
でも、ちょっとした症状だと先生に伝えなくてもいいかと思ってしまうことも…
中にはそういう方もいらっしゃいます。ちょっとした症状でも話してもらえれば対応しますので、我慢する必要はありません。医師に相談しにくいという場合は、看護師さんや薬剤師さんに相談してみてください。診察している時間より通院治療センターで点滴をしている時間のほうが長いですから、点滴をしながらだとゆっくり話せるということもあると思います。ですから僕は空いた時間に通院治療センターに行って、看護師さんや薬剤師さんに「今日はどうだった?」と患者さんのことを聞くようにしています。
では次に、自宅にいるときに注意すべきポイントはなんですか?
うちの病院では、副作用チェックシートを患者さんに渡して、自分の状態を毎日記録してもらっています。治療を続けていくには、自分の体の状態を知っておくことが大切です。特に患者さんに言っているのは、「発熱とか口内炎、下痢などの症状で困ったときは、次の受診まで待たないで電話をください」ということです。「無理をしないで、何かあったらとにかく電話してください」と言っています。病院に来てもらうとどうしても待ち時間が長くなりますが、電話で連絡をもらえればこちらで受付の手続きをして、待ち時間なく対応することができます。
そういった患者さんへの対応で、先生ご自身ががんの闘病を体験される前と後で
変わったことがあれば教えてください。
患者さんがどんな気持ちで治療を受けているのかが、実感としてわかるようになりました。例えば「食事が十分とれない」とか「味覚が変わって、何を食べても同じに感じる」と聞くと、「確かに自分もそうだったな」と思います。食べたいものがなくなるんですよね、本当に。どれも同じ味で「何を食べているのかな」という感じだったので。だからそういった患者さんには食べやすいものを食べてもらって、「ここを乗り切れば、症状が続くことはないですよ」ということを話して、前向きに治療を受けてもらえるように励ましています。
術後補助化学療法を終えた患者さんには、どんな言葉をかけているんですか?
「半年間頑張りましたね。おつかれさまでした」と言っています。治療が終わった後の定期的な検査は外科の先生が行うことになっているので、再発しなければ治療が終わった後に患者さんが僕に会うことはないんです。だから、「もう僕と会わないといいですね」という話をして送り出しています。
再び先生に会うことになったら、それは残念ながら再発してしまったということですね。
そうです。たとえば、最善と考える術後補助化学療法を受けていただけなかった患者さんで、再発後にその化学療法を受けたらよく効いたという経験がありました。大腸がんは再発させないことが重要ですから、「あのとき、あの術後補助化学療法を受けてくれていれば、再発を防げたかもしれない…」という思いがありました。ですから、患者さんには術後補助化学療法として最善の治療をお勧めしています。
最後に、大腸がんの患者さんとそのご家族にメッセージをお願いします。
「術後補助化学療法を受けることを、心配しすぎないで」ということを伝えたいです。術後補助化学療法の治療効果が高いことは、多くのデータが示しています。少しでも再発する可能性を減らすことができるなら、やる価値のある治療だと思います。僕がステージⅢの大腸がんだったら、必ず術後補助化学療法を受けますね。もし迷っているなら、一歩踏み出してみてください。みなさんが前向きに治療を受けられるように僕たちも協力します。もし副作用が出ても、症状を軽くしながら治療を続けることができます。今、治療を受けている方には「我慢しないで相談してください」と伝えたいですね。
【お話をうかがった先生】
佐久総合病院 腫瘍内科部長
宮田佳典先生
- 宮崎医科大学 卒業
- 日本消化器内視鏡学会指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本がん治療認定機構がん治療認定医 など