医療従事者インタビュー
公開日:2012.12.20更新日:2016.04.14
「あのとき、こうしておけば…」と後悔しないために
目次
- 1.手術の前から、術後補助化学療法の可能性を見すえて
- 2.大腸がんの手術を受けるときは、検査と同じぐらいの気持ちで
- 3.手術後に再発する患者さんを少しでも減らしたい

「手術が終わったのに、なぜ抗がん剤治療(術後補助化学療法)をしないといけないの?」
と思われる患者さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
そういう方もいらっしゃいますが、少ないと思います。術前から実施する可能性が考えられる方には、手術前から「ステージⅢなら術後補助化学療法が必要だし、ステージⅡなら病理検査の結果によりますが、詳しい話は手術後にしましょう」と伝えているので、“手術の次は術後補助化学療法”という流れを、ある程度把握されているように思います。
患者さんに、術後補助化学療法をどのように説明していますか?
まず、ステージⅢa、Ⅲb、またはステージⅡの一部の患者さんには、ステージごとの再発率や、再発がどのように起こるかについて説明します。次に、術後補助化学療法のプラス面とマイナス面を説明します。
術後補助化学療法のプラス面とマイナス面というのは、具体的にはどういったことでしょうか?
プラス面は、手術のみを行った場合と比べて、再発する可能性を低く抑えられるということ。具体的には、ステージⅢaの場合、手術だけだと3割の人が再発してしまいますが、術後補助化学療法を行うことで、その割合を抑えることができます。使用する抗がん剤によっても異なりますが、再発率を1割以上改善することが期待できます。
その代わり、白血球減少や吐き気や消化器症状、手足のしびれなどの抗がん剤による副作用が出ることがあります。もう1つのマイナス面としては、ステージⅢaであれば、手術だけでも7割の人は再発しないので、これらの方々にとって抗がん剤は、無意味ということになります。ただし、個々の患者さんを見ても、その人がこの7割に入るかどうかを事前に知ることはできませんし、もし再発してしまった場合には、がんを治す治療ではなく、多くの場合で延命治療をすることになります。
術後補助化学療法のレジメンには、いくつかの選択肢があります。
先生は、どのようにレジメンを決めているのでしょうか?
我々ができることは、患者さんが自分に合ったレジメンを選ぶための材料を提供し、最終的には患者さん自身に決めていただいています。当然、手術を受けた患者さんは、治る可能性を少しでも上げたいと思っているし、医師として、少しでも再発を防げる可能性の高い治療法を、患者さんに伝えるべきだと思っています。しかし、副作用などのマイナス面についても納得して治療をスタートできるように、疑問があれば相談してください。
副作用が心配で、レジメンをなかなか決められない患者さんもいらっしゃると思いますが…
副作用は強く出る方もいれば、ほとんど出ない方もいるので、正直なところ、やってみないことには分かりません。もし副作用が強ければ、「副作用を抑える薬がありますし、場合によっては抗がん剤の量を調整して、強い副作用を抑えることもできます」「それでも合わなければ、治療法を変えることもできますよ」「迷っているなら、まずは一度やってみてはいかがでしょうか」というアドバイスをしています。
それでも不安が残る場合は、どうすればいいでしょうか?
治療を決めかねるという場合はあると思います。そのような場合には、セカンドオピニオンを受けてみるのも1つの方法だと思います。セカンドオピニオンを受けたいということを主治医に言い出しにくいという方もいらっしゃいますが、ほかの病院で話を聞いてきてもらって、不安がない状態で治療法を決めてもらうのは、大切なことだと思います。
最後に、大腸がんの患者さんとそのご家族にメッセージをお願いします。
治療を受けるからには、自分が信頼できる病院で、納得するまで説明を受け、「あのとき、こうしておけば良かった」と思わないですむように、自分の意志で悔いのない治療を受けてください。我々はできるだけ不安を取り除いて、患者さんが選択した治療を安心して受けてもらえるように心掛けています。
【お話をうかがった先生】
関西ろうさい病院 下部消化器外科部長
加藤健志先生
- 関西医科大学 卒業
- 日本内視鏡外科学会技術認定医
- 日本外科学会指導医
- 日本がん治療認定機構がん治療認定医 など
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