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HOME  >  医療従事者インタビュー  >  大腸がんの腹腔鏡下手術は傷が小さく体への負担も軽い 山口達郎先生(1)

医療従事者インタビュー

公開日:2020.03.09

外科医が解説する大腸がんの手術と術後の過ごし方

がん・感染症センター都立駒込病院 外科・遺伝子診療科部長 山口達郎先生
がん・感染症センター都立駒込病院
外科・遺伝子診療科部長

山口達郎先生

大腸がんの手術を受けることになったら、手術とはどのようなものなのか、手術後の生活はどうすればよいのかといった疑問や不安が出てくるのではないでしょうか。今回は、大腸がんの手術と、手術を受けた後の生活の変化や注意点について、がん・感染症センター都立駒込病院 外科・遺伝子診療科の山口達郎先生にお話をうかがいました。

目次

大腸がんの手術の多くが腹腔鏡下で行われますので、傷は小さく、体への負担も軽くなっています。

先生が所属されている外科(大腸)では、どのような診療をされているのでしょうか?

当院の外科は臓器ごとにいくつかのグループに分かれていて、私は大腸を担当しています。そのなかでも大腸がんを主に診ており、手術をし、必要な場合は手術後の化学療法(術後補助化学療法)も行います。また、病院によって異なりますが、当院では再発したり転移を起こしたりした大腸がんに対する化学療法も外科で行っています。

大腸がんで手術が必要になるのはどのような場合ですか?

ステージⅠの一部(がんが粘膜下層に深く入り込んでいる場合)、ステージⅡ、Ⅲが手術の主な対象になります。ステージ0とステージⅠの一部(がんが粘膜下層の浅いところにとどまっている場合)は内視鏡治療の対象となりますが、ステージⅠで内視鏡治療を行った場合でも、内視鏡で取った組織を検査した結果、大腸の粘膜下層に深く入り込んでいる、悪性度の高いがんであった場合などは追加で手術を行うこともあります。
ステージⅣでは患者さんの体の状態や転移の数などを総合的にみて、手術を行うかどうか判断します。手術で取り切れる場合は手術を、他の臓器にたくさんの転移があるなどの理由から手術では取り切れない場合は化学療法を行います。

大腸がんの手術にはどのような種類があるのですか?

大腸がんの手術には、主に開腹手術、腹腔鏡下手術の2つがあります。最近では開腹手術よりも傷が小さく、体への負担も軽い腹腔鏡下手術を行うことが多くなってきています。なお、当院では直腸がんを対象に手術支援ロボットを使った手術を行っていますが、まだまだ全国的には普及していない現状があります。

大腸がんの手術と聞くと人工肛門(ストーマ)を想像してしまいます。人工肛門とはどのようなものですか?

人工肛門とは、なにか機械などを埋め込んだりするものではなく、ご自分の腸の先をお腹の外に出して便の出口としたものです。その出口にパウチと呼ばれる袋状の装具をつけて便をためられるようにしており、基本的には便や臭いが袋から漏れ出すことはありません。また、人工肛門があることによる日常生活の制限はほとんどありません。お風呂に入っても、運動をしても構いません。温泉や銭湯など人目が気になるような場合には、人工肛門を目立たなくする肌色のパッチを利用するという方法などもあります。

人工肛門(ストーマ)が必要となるのはどのような場合ですか?

図:大腸の絵

大腸がんには結腸がんと直腸がんがありますが、人工肛門になる可能性があるのは、直腸がんのなかでも肛門に近い場所にがんがある場合です。肛門には便やおならを出したくないときに止めておける括約筋(かつやくきん)という筋肉があります。一般的に、がんが肛門近くにあり、手術でこの筋肉も一緒に取らなければならない場合には、人工肛門が必要になります。一方で、括約筋を残すことができれば、肛門は温存できます。
人工肛門になるかどうかは、がんができた場所、がんの進行度などによって異なりますので、主治医とよくお話しされるとよいと思います。

手術翌日から歩行訓練や水分摂取を開始します。手術~退院までは1週間ほど。

大腸がん手術の入院から退院までの経過について教えてください。

当院でのおおまかな流れを説明しますと、まず手術前の精密検査は外来で行い、手術日の前々日か前日に入院となります。手術を行った当日は高度治療室(HCU)に入室します。ですが、問題がなければ翌日(術後1日目)には一般病棟に戻り、歩行訓練を開始し、水分摂取と栄養剤を服用します。吐き気などが現れなければ、術後2日目から食事を開始します。少しずつ普通食に戻していき、歩行や食事、排便などに問題がないと判断されれば退院となります。
通常は術後7~8日目に退院となりますが、早い方では術後5日目に退院となる場合もあります。
なお、人工肛門をつくる手術を行った場合は、人工肛門の取り扱いに慣れる必要があるので、入院期間は2週間ほどになります。

大腸がん手術の入院~退院までの流れ

(当院での一般的な流れです。病院や患者さんの病状によって異なる場合があります。)

手術前日または前々日
入院(食事以外に特別な制限はありません)
手術当日
手術後はベッド上で安静にします
術後 1 日目
歩行訓練を開始します
水分摂取、栄養剤の服用を開始します
術後 2 日目
食事を開始します(おかゆから始めます)
術後 7~8 日目
退院※人工肛門を作った場合は、術後2週間程度で退院

大腸がん手術の合併症について教えてください。

縫合不全(ほうごうふぜん)

手術後の合併症でもっとも注意を要するのが、縫合不全といって、腸管どうしを縫い合わせた部分がうまくつながらずに便がお腹の中に漏れてしまうものです。縫合不全は入院中(術後2~7日)に起こることが多いです。結腸がんの手術ではそれほど頻度が高くありませんが、直腸がんの場合は5~10%程度の頻度で起こると言われています。がんの場所が肛門に近いほど起こる確率が高くなりますので、肛門に近い直腸がんの手術を行う場合は一時的に人工肛門をつくり、縫い合わせた部分を安静に保つ方法を採ることもあります。この方法ですと、仮に縫合不全が起きたとしても、お腹の中に漏れ出す便の量を少なくできます。一時的な人工肛門で過ごす期間は3ヵ月ぐらいです。役目が終わればもう一度入院し、お腹に開けた人工肛門を閉じます。

腸閉塞(イレウス)

手術後に腸の動きが悪くなって腸閉塞(イレウス)が起こることがあります。起こってしまった場合には、食事の開始を遅らせたり、開始している食事を数日中断することで改善します。

その他

出血、傷からの感染、寝たまま動かずにいることによる深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)などが挙げられます。

医療者はこのような合併症が起きないように最大限の注意を払っていますが、完全に防ぐことはできません。入院中にこういった合併症が起こった場合には、入院期間が長くなってしまう場合があります。

手術の後、傷の痛みはありますか?

写真:山口達郎医師1

傷が痛いと辛いですよね。当院では術後2日間ほどは背中に入れたチューブから痛み止めを注入しており、痛いときにはご自分でボタンを押して痛み止めの薬を追加できるようになっています。ですが、腹腔鏡下手術の場合は傷も小さいので、手術翌日は傷をかばうように歩いていた患者さんも、術後3~4日目ごろには普通に歩いていることが多い印象です。もし、そのときまで痛みが残っていれば飲み薬の痛み止めを使って和らげることもできます。

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大腸がんの手術後、日常生活で注意することは?

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当ウェブサイトは、大腸がんやその治療法などに関する一般的な情報を提供するものであり、特定の治療法などを推奨するものではありません。病状や治療法などに関しての判断は、担当医またはかかりつけの医療機関にご相談ください。