医療従事者インタビュー
公開日:2017.03.30
あなたのお悩み解決のサポーター、がん相談支援センター
埼玉県立がんセンター
地域連携・相談支援センター
(左)看護師 仲島 晴子先生
(右)ソーシャルワーカー 藤吉 法子先生
多くのがん患者さんやご家族は、がんと診断されたとき、治療方針について医師から説明を受けたときなど、いろいろな場面で不安や疑問を抱くことでしょう。また、不安や疑問を解消したいと思っても、どのように調べれば良いかわからなかったり、相談する相手がいないという方は少なくありません。そのようなときは、がん相談支援センターを利用してみてはいかがでしょうか。今回は、がん相談支援センターについて、埼玉県立がんセンター 地域連携・相談支援センターの仲島晴子先生と藤吉法子先生にお話をうかがいました。(本文中は敬称略)
目次
- 1.がん相談支援センターは誰でも利用可能
- 2.抗がん剤治療の誤解や就労の悩み
がん相談支援センターとは、どのようなところなのでしょうか?
藤吉
がん相談支援センターは、がん患者さんやご家族の不安や想いを受け止めて一緒に考え、必要な情報や活用できる制度などを提案・整理し、その方がご自身で意思決定できるようお手伝いをする場所です。これは国の施策としても掲げられていて、がん対策基本法とそれに基づき策定されたがん対策推進基本計画により、全国のがん診療連携拠点病院を中心に、2006年からがん相談支援センターが設置されています。
仲島
医療技術の進歩は目覚ましく、治療に関する情報は日々更新されています。また近年はインターネットや書籍などからも、がんに関する情報を得る機会は多くなりました。便利になった一方で、その情報が正しいかどうか、ご自身にとって必要かどうかなどを判断できず、かえって混乱してしまうこともあると思います。がん相談支援センターでは、国が指定した研修を修了した相談員が、相談される方の不安や疑問をおうかがいしています。
藤吉
がんに関することであれば、患者さんやご家族に限らず、その病院を受診していない方、がんにかかっていない方など、どなたでも無料で利用していただけます。一般的ながんに関する情報はお伝えすることができますが、個々人に対する診断や治療についての医学的な判断はいたしかねますので、主治医に確認いただくよう案内をしています。なお、病院ごとに詳細は異なりますが、がん相談支援センターの概要は以下のようにまとめられます。
がん相談支援センターの概要
- 全国のがん診療連携拠点病院に設置されています
- 名称は病院によって異なりますが、必ず「がん相談支援センター」が併記されています
- 誰でも無料で利用できます
- 生活全般の相談ができるソーシャルワーカー、病気や治療について詳しい看護師などが対応しています
- 相談方法は面談、電話、メールなど、病院によって異なります
- ※相談内容がご本人の同意なしに他の方に知られることはありません
埼玉県立がんセンターのがん相談支援センターについて教えてください。
藤吉
当センターでは「地域連携・相談支援センター」という名称で運営しており、院内外の患者さんやご家族を中心にご利用いただいています。また、院内スタッフからの依頼だけでなく、地域機関や行政、近隣をはじめ県外の病院の方からのご依頼やご相談もお受けしています。そのため、年間の相談件数は院内外の合計で22,000件を超えています。
仲島
相談は面談もしくは電話で対応しています。面談の良いところは個室でゆっくり落ち着いて話せることです。状況によって様々ですが、お越しいただいた方にとって実りある面談となるよう、面談時間は1時間と長めに設定しています。面談は原則予約制となっており、もし予約をせずにいらっしゃった場合は、お待たせする場合があります。また、電話の良いところは、相談者の方が気軽に相談できることです。
藤吉
また、当センターでは県内他施設のがん相談支援センターに先駆けて「就労支援」に積極的に取り組んでいます。具体的にはハローワークの方や、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの方にお越しいただき、無料の個別相談会を定期的に実施しています。ハローワークの出張相談では、参加者の希望や病状などを踏まえた求人情報を紹介していただいたり、履歴書や職務経歴書の書き方、面接での病気の伝え方や自己PRの仕方などのアドバイスをいただいたりしています。また、社会保険労務士とファイナンシャルプランナーの相談会では、職場への病気の伝え方や復職のアドバイス、民間保険(医療・生命保険など)や収入減に伴うマネープランなどの相談に応じていただいています。いずれも専門職の方なので、無料で相談できることは大きなメリットだと思います。
がん相談支援センターには、どんな相談が多いのでしょうか?
藤吉
相談内容は多種多様です。中でも最も多い相談は、やはり病気や治療のことで、次に多いのが経済的なことです。がんの治療は健康保険が適用されるとはいえ、患者さんの出費はかなり増えます。お仕事をしている方は一時的にでも休むことになるため収入が減りますし、定年退職した方であれば、「収入がないのに、どうやって治療費を支払っていけば良いのか」と悩まれるようです。私はソーシャルワーカー(社会福祉士)として、健康保険や障害年金などの社会保障制度のご案内や、身体障害者手帳や公費負担医療、成年後見制度(法務省サイト)などのご紹介、それら関係機関との連絡調整を行い、みなさんのお手伝いをしています。
仲島
私は看護職の相談員として、介護保険など在宅療養サービスのご案内や、訪問診療・看護と連絡調整を行い、患者さんやご家族が自宅で安心して療養できるよう支援をしています。誰に相談したら良いかわからず、一人で悩んでいることでも、お聞かせいただければ、私たちがお手伝いできることが見つかると思います。以前、ご自身の入院中にペットの世話をどうすれば良いかという相談を受けたこともあります。患者さんにとってはご自身の身体と同じくらい心配なことがたくさんあるかと思います。どんなことでも結構ですので、悩まれていることがあればお声掛けいただければと思います。
医療者とのコミュニケーション
- ・医師の説明が難しくて理解できない
- ・医師に何を質問すれば良いかわからない
就労の問題
- ・がんについて会社にどう伝えればよいかわからない
- ・仕事を続けながら治療ができるのか知りたい
- ・就職や復職について知りたい
精神的な問題
- ・漠然とした不安がある
- ・不安で眠れない、物事が手につかない
- ・落ち込んでいる気持ちを聞いてもらいたい
社会制度
- ・治療にかかる医療費について知りたい
- ・身体障害者手帳の申請手続きやサービスについて知りたい
- ・傷病手当金、障害年金の申請を考えたい
- ・成年後見制度の手続きについて知りたい
家族間のコミュニケーション
- ・家族にどう伝えたら良いかわからない
- ・患者本人への接し方を相談したい
- ・家族として何ができるかわからない
療養生活
- ・地域の病院に転院したい
- ・介護保険、訪問診療、訪問看護を利用したい
- ・民間保険(医療・生命保険など)の手続きを知りたい
- ・近隣施設への入所を考えたい