医療従事者インタビュー
公開日:2012.03.30更新日:2017.02.27
EBM・標準治療とは
財団法人日本医療機能評価機構
EBM医療情報部サービスセンター(Minds)部長
大腸癌治療ガイドライン作成委員
(ガイドライン作成方法論)
吉田雅博先生
「根拠に基づく医療」を意味するEBM(Evidence-Based Medicineの略)は、現代の医療において、基本となる考え方です。診療ガイドラインが制作され、一般の方々もそれを目にするようになったことから、EBMへの関心は、近年一段と高まってきました。EBMの具体的な内容や、標準治療について知るメリットなどについて、大腸がんをはじめ複数の病気の診療ガイドラインの策定に携わっている吉田雅博先生にお話をうかがいました。
目次
- 1.EBMの考え方と、その目的
- 2.新しい治療法が標準治療として認められ、推奨されるまでの過程
- 3.標準治療に関する知識を身につけるには
EBMはEvidence-Based Medicineの略で、「根拠に基づく医療」という意味です。質が高く、満足できる治療を誰もが受けられるようにするという観点から、1990年代に海外で生まれました。
EBMという考え方が日本に伝わった当初は「根拠に基づく」という言葉が一人歩きして、「根拠に基づきさえすれば、どんな医療を行ってもいい」と誤解されてしまうこともありました。現在のEBMという考え方には「患者さんの意向」、「医療者の技量」、「エビデンス(科学的根拠)」という3つの要素があり、そのうちどれか1つでも欠けると質の高い医療は行えません。そのため、EBMは正確には「根拠にも、基づく医療」といえるかもしれません。
患者さん中心の医療を実践するためです。つまり、先ほどの3つの要素のうち「患者さんの意向」がもっとも尊重されているということです。治療の最初から最後まで、常に患者さんが中心であるという考え方こそ、EBMの基本だといえます。そのためには、自分が受ける治療の情報を集め、患者さんからもどのような治療を受けたいかを伝えていくことが大切です。
「診療ガイドライン」とは、エビデンスとなる研究結果が、実際に治療の現場で有効なのかを専門家が議論し、推奨される治療法としてまとめたものです。大腸がんであれば「大腸癌治療ガイドライン」がそれにあたります。
「標準治療」とは、効果や安全性が確かめられ、診療ガイドラインで推奨された結果、日本で広く行われている治療法のことです。
「診療ガイドライン」で推奨される「標準治療」を参考にしながら、患者さんの意向や主治医の考えを総合的に検討し、患者さんにとって最適な治療法は何かという結論を出すのがEBMの基盤です。