医療従事者インタビュー
公開日:2020.05.18
薬に関する疑問や不安は薬剤師にご相談を
埼玉医科大学国際医療センター
薬剤部
藤堂真紀先生
近年、抗がん剤の種類が増えてきたことに伴い、さまざまな副作用が現れるようになるなど、抗がん剤治療は複雑になってきています。そのような中で、薬剤師は薬の専門家として大切な役割を果たしています。
今回は、病院の外来で抗がん剤治療に携わる薬剤師の役割について、埼玉医科大学国際医療センターの藤堂真紀先生にお話をうかがいました。
目次
- 1. がんにおけるチーム医療と薬剤師の役割について
- 2. 治療について困ったことがあれば薬剤師にも気軽にご相談を
がん治療では、さまざまな職種の医療スタッフがチームとなって患者さんを見守る「チーム医療」が行われています。
抗がん剤治療における薬剤師の役割について教えてください。
抗がん剤治療では、患者さん一人一人の状態に合わせて、さまざまな専門分野の医療スタッフがチームとなって取り組んでいます。これを「チーム医療」と呼び、チームには、医師、薬剤師、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士、遺伝カウンセラー、CRC(臨床研究コーディネーター)などの職種が含まれます。
この中で、薬剤師は「薬の専門家」の立場から、抗がん剤治療に関わっています。最近、抗がん剤の種類やレジメンが増え、複雑になってきており、抗がん剤治療を適正に行えるよう、医師が処方した内容を確認したうえで抗がん剤を準備するのは薬剤師の重要な役割のひとつです。また、抗がん剤治療は外来で行うことが多くなり(外来化学療法)、患者さんがご自宅で抗がん剤を服用したり、副作用に対処する必要が出てきており、治療開始時の意思決定を含めて患者さんにわかりやすく抗がん剤の説明をし、副作用が現れていないか確認するなど、患者さんのサポートも行います。
このほか、患者さんからお聞きした情報をチームのメンバーに伝えることで、チーム全体で患者さんにとってより良い治療ができるようにしていくことも大切な役割です。
外来で抗がん剤治療に携わる薬剤師の主な役割
使う薬の確認や準備
- 抗がん剤の適応や量、スケジュールが正しいかの確認
- 他の病気で使っている薬との飲み合わせは問題ないかの確認
- 抗がん剤の準備
服薬のサポート
- 患者さんへの抗がん剤の説明(薬の飲み方や副作用の対処法など)
- 副作用が現れていないかの確認、医師へ副作用の対応策の提案
- 飲み薬をしっかり飲めているかの確認
- 患者さんの治療に対する考え方に変化がないかの確認など
外来で抗がん剤治療を受ける患者さんは、どのような場面で薬剤師と関わりますか?
来院した患者さんは受付をした後、採血などの検査を行いますが、検査結果が出るまでに1時間程度かかります。そこで当院では、その待ち時間を利用して、必要に応じて薬剤師との面談(薬剤師外来)を行っています。面談では、患者さんから体の状態や症状、飲み薬は問題なく飲めているかといった確認のほか、治療に関して心配に思っていることなどをお聞きしています。その後の医師の診察にも、薬剤師ができるだけ同席し、事前に患者さんからうかがった情報をふまえて、副作用の対応策などを医師とともに検討します。
医師の診察が終わった後、点滴の抗がん剤治療を行う場合は、院内にある外来化学療法室で治療を行います。一方、飲み薬の抗がん剤治療の場合は、保険薬局の薬剤師から薬を受け取ることになります。患者さんの了解を得て、保険薬局に対して「行っているレジメン」や抗がん剤の投与量を計算するのに必要な「患者さんの身長・体重」などの情報を事前に伝えており、処方内容に問題がないかを保険薬局でも再度確認できるようにしています。
そのほか、帰宅後に不安なことやわからないことが出てきても大丈夫なように、救急外来と薬剤師外来に直通の電話番号を記したカードを患者さんに渡していて、自宅から電話相談できるようにしています。
なお、薬剤師によるサポート体制は病院や患者さんの状況によっても異なります。当院でも患者さんによっては点滴の抗がん剤治療を受けている最中に薬剤師による聴き取りや説明を行う場合があります。
外来化学療法における薬剤師の関わり (埼玉医科大学国際医療センターの例)
来院
採血・検査
面談(薬剤師)
検査結果が出るまで約1時間
患者さんから症状のこと、心配に思っていることなどいろいろなお話をお聞きしています(薬の飲み残しの確認などもしています)
診察(医師)
できるだけ薬剤師が同席し、副作用の対応策などを医師と検討します
説明(薬剤師)
新たに薬が処方された場合、薬の説明を行います
抗がん剤治療
点滴:外来化学療法室で治療を行います
飲み薬:保険薬局で薬を受け取ります
保険薬局と連携します
埼玉医科大学国際医療センター・包括的がんセンター・通院治療センターの様子
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【受付】 奥のボードで担当の医療スタッフがわかるようになっています。
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【薬剤師外来】 面談はプライバシーに配慮した個室で行われます。
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【外来化学療法室】 点滴中に退屈しないようリクライニングチェアにテレビが付いています。
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【院内の通路】 絵画が飾られ、ゆったりとした時間が流れます。
薬の専門家として、患者さんをサポートしていくうえで大切にしていることを教えてください。
がん患者さんは高齢の方が多いので、腎臓や肝臓などの臓器の機能が悪くなっていたり、高血圧や糖尿病などのがん以外の病気を同時に抱えている場合が少なくありません。そのような患者さんでは、体の状態に合わせて抗がん剤の量を調節したり、持病の薬との飲み合わせを考えたうえで副作用を和らげる薬(支持療法薬)を選んだり、総合的に判断する必要があると考えています。薬剤師はがん以外の薬にも精通する必要があり、がんだけでなく他の病気も含めて、薬の観点からトータルで患者さんをサポートしていくことが薬剤師としての大切な役割だと考えています。