医療従事者インタビュー
公開日:2012.07.20
大腸がん治療について悩みを抱えている方へ
目次
- 1.がんの化学療法を行う自分自身が、2度もがんに
- 2.術後補助化学療法を始める前から心配しすぎないで
- 3.治療中の悩みは、一人で抱え込まずに相談を
大腸がんの術後補助化学療法についておうかがいします。
まず、手術が終わってから術後補助化学療法が始まるまでの流れを教えてください。
これ(右図)がおおまかな流れです。うちの病院では、大腸がんの手術後、だいたい1週間から10日で退院できます。退院した後、外科の先生からは病理結果と再発の可能性について詳しく説明されます。また化学療法の必要性についても簡単に説明されます。後日、僕が再度、病理の診断と再発の可能性について簡単に説明をして、化学療法の詳細(使用する薬剤やスケジュール、期待される効果と副作用など)を説明します。再発の可能性が高いことが事前に分かっている場合には、手術前から外科の先生は術後補助化学療法も含めた治療の流れを説明してくれるので、手術後にいきなり抗がん剤の話が出るわけではありません。
患者さんは、術後補助化学療法を行う可能性があることを
手術前から説明してもらえるわけですね。
そうです。だから、患者さんはその必要性を理解していて、ほとんどの方は、僕との最初の面談で術後補助化学療法を受けることを決心されています。高齢の方や、治療費の面で迷っている方は、「ちょっと考えたい」とおっしゃることがあります。
治療費のことを気にされる方は多いですか?
多いですよ。治療費が高額になる場合には、「高額療養費制度を利用すれば、窓口での支払いを減らすことができます」という話をします。手続きなどの詳しい説明は、院内の医療相談室で受けることができます。ですから、そういう心配があったら、まず相談してください。
術後補助化学療法を行うことになったら、次にレジメンを決めますよね。
いくつか選択肢があるようですが、レジメンを決める要因には、
どのようなものがあるのか教えてください。
一番はステージでしょうね。リンパ節転移があるステージⅢの患者さんには術後補助化学療法を勧めています。術後補助化学療法の中でも最善と考えるレジメンをお勧めしていますが、それ以外のレジメンを選ぶこともできますので、面談のときにはすべてのレジメンを提示して、患者さんにあったレジメンを選んでもらっています。
最終的には患者さんが決めるということですね。
はい。やはり患者さんには納得して治療を受けてもらいたいと思います。レジメン選択を迷っている方には、納得していただけるまで話し合いをします。場合によっては、セカンドオピニオンを紹介することもあります。最近はインターネットで調べてから来られる方も多いですね。患者さんがご高齢でも、息子さんや娘さんなど、ご家族が調べてこられて質問を受けることもあります。質問は、副作用に関することが多いです。
副作用に対して不安を感じておられる方が多いということでしょうか?
そうだと思います。「抗がん剤というのは副作用が大変だ」という意識が強いのでしょうね。だから「もし副作用が強かったら、耐えられるかどうか…」ということで悩まれています。副作用は全員に出るわけではないし、たとえ出ても、医師が対処をするから大丈夫だということを、患者さんには知ってもらいたいですね。
患者さんにとっては、治療に対する漠然とした不安というのもあると思うのですが…
「術後補助化学療法を受けたいんだけど、漠然とした不安があって迷っている」という患者さんに僕がいつも言うのは、「そんなに心配はいらないから、とにかく1回やってみましょう」ということ。それを聞いて、「それなら頑張ってやってみようかな」という考えになる患者さんは多いですよ。
それで実際にやってみて、治療は続けられるものなのでしょうか?
うちの病院では、9割以上の患者さんが6ヵ月間の術後補助化学療法を最後まで続けられています。やってみて副作用が出ても、薬の量を調節することもできるし、いったん治療を休んで副作用が改善してから再開してもいい。そうやってうまく副作用をコントロールしていけるので、最後まで続けることは可能ですよ。