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HOME  >  医療従事者インタビュー  >  ささいなことでも困ったときは相談を 濱田麻美子先生(2)

医療従事者インタビュー

公開日:2016.02.01

看護師からみた外来化学療法の治療現場

目次

どんなささいなことでも困ったときは、遠慮せず声を掛けてください。

外来化学療法はチーム医療で取り組まれているそうですが、チーム医療とはどのようなものですか?

チーム医療とは、専門分野の異なるさまざまな医療スタッフが一丸となって一人の患者さんの治療にあたる取り組みのことです。病院には、医師、薬剤師、看護師だけでなく、さまざまな専門分野の医療スタッフがいます。経済的な悩みなどをサポートする医療ソーシャルワーカーや、検査をする臨床検査技師、臨床試験をサポートをするCRC(臨床研究コーディネーター)、相談支援センターの相談員などです。その中で、看護師は、患者さんの立場に寄り添って、日常生活に沿ったサポートをしたり、患者さんと医療スタッフをつないだりする役割を担っています。チーム構成は病院によって異なり、どの医療スタッフとどれくらい関わるかは、患者さんごとに異なります。

外来化学療法における、看護師の具体的な役割を教えてください。

当院の外来化学療法センターでは、点滴の針を刺して化学療法を始めるところから、針を抜いて点滴を終了するところまで、安全に化学療法を行うことが看護師の重要な役割です。また、副作用のケアの方法を含めて、自宅で患者さん自身が体調管理できるように指導をしています。例えば、吐き気止めなどの支持療法薬の使い方、食事やスキンケアの方法といった生活上の注意点、病院に連絡が必要な症状について説明しています。ほかには、仕事環境や家族関係の調整、自宅でのサポートが必要な患者さんに対しては、病院内にある地域医療連携センターと連携をとっていくこともあります。

看護師だけでは解決できない相談を患者さんやご家族から受けることもあります。そのような場合は、対処できる専門の医療スタッフを紹介しています。看護師は患者さんの役に立ちたいと思っています。忙しそうだからといって遠慮せず、どんなささいなことでも困ったことがあるときは、ぜひ声を掛けていただければと思います。

多くの患者さんが持つ副作用のイメージは、20~30年前のもの。点滴中に食事をする患者さんも。

これから外来化学療法を始めようとする患者さんは、どんなことを心配されますか?

「化学療法は入院して行うもの」というイメージをお持ちの方が多いので、「本当に外来で大丈夫でしょうか」という心配が多いです。そういう患者さんに対しては、これから行う化学療法は、標準治療と呼ばれる科学的根拠(エビデンス)に基づいて効果の高さが確かめられ広く行われている治療法であること、そして実際に多くの方が外来で同じ治療を受けていることを説明して、安心していただいています。外来化学療法をやってみると、「外来だと家から通えていいね」とおっしゃる方が多いです。

また、ほとんどの方が、吐き気・嘔吐・脱毛などの副作用を気にされます。抗がん剤は吐き気の副作用がひどくて、洗面器を常に抱えているという、20~30年前のイメージのままの方が多いようです。今では、患者さんの状態にもよりますが、点滴を受けながらおにぎりやサンドウィッチ、お弁当などを食べている患者さんがいらっしゃることをお伝えすると、驚かれます。

脱毛に関しては、薬によって起こりやすさが違います。脱毛が起こりにくい薬を使用する場合には、少なくともこれから始めようとしている治療ではあまり起きないことを患者さんに説明します。脱毛が起こる可能性が高い薬を使用する場合は、脱毛を避けることは難しいので、ウィッグや帽子をご紹介するなど、脱毛したときはどうすればいいのか、ほかの方はどうしているのかを説明します。

このほか、皮膚にぶつぶつができる皮疹や手足のしびれといった副作用がみられる薬もあります。こういった副作用は予防をすることが難しいので、治療を始める前に、副作用の対策について説明をしています。

外来化学療法を始めた後の患者さんは、どのような不安や悩みを持つものでしょうか?

治療開始後も、やはり副作用を心配される方は多いです。電話相談窓口のある病院が多いと思いますので、帰宅後に気になる症状が出た場合は利用してみてください。
電話相談は、患者さんからだけでなくご家族の方から受けることもあります。例えば、「数日後に受診の予定なんですけど、患者さんがつらそうなので早めに病院へ行ったほうがいいでしょうか」といった相談です。このように受診の判断に迷ったときだけでなく、不安を感じたときは電話で相談していただければと思います。

治療期間中にお子さんの結婚式やお孫さんの入学式といった大きなイベントを迎える患者さんもいます。そのような場合でも、あらかじめ言っていただければ、副作用の起こりやすい時期を外すよう点滴の日程を調整することもできます。

患者さんもご家族も、話すときは常に本音で。気をつかいすぎるとお互いに疲れてしまいます。

外来化学療法を受ける患者さんが、心がけておくことはありますか?

一つは、「自分を支援してくれるサポーターを持つ」ことです。サポーターは医療スタッフでもご家族でも友人でも会社の方でも、多ければ多いほどいいと思います。いざというとき、「こういうことをお願いしたい」と伝えて、支えになってもらうためです。また、治療を最終的に決断するのは患者さんご自身ですが、がんになると冷静な判断ができないことがあります。そんなときのために、患者さんのことを思って厳しいことを言ってくれる人が身近にいると安心です。

もう一つは、「病気や治療に関する情報を信頼できるところから得る」ことです。いろいろな情報がインターネットで手に入る時代ですが、インターネットで手に入る情報のすべてが正しいとは限りません。また、個人の体験談はあくまで一人の体験でしかないため、患者さんご自身に必ずしも当てはまらないことに注意が必要です。急に食事療法を始めたり健康食品を摂り始めたりする方がいますが、「自分ががんではなく健康な状態なら、本当にそれをするか?」ということを基準に判断するといいでしょう。信頼できるサイトとして代表的なものに、国立がん研究センターのWEBサイト「がん情報サービス」などがあります。

患者さんが、ご家族に対して心がけることはありますか?

外来化学療法に限りませんが、ご家族に気をつかいすぎる患者さんが多くいます。「面倒をみてもらい申し訳ない」「仕事や育児ができずに迷惑をかけている」と患者さんご自身は思っていても、ご家族は負担とも迷惑とも思っていません。患者さんの存在そのものが、ご家族にとってはかけがいのないものです。

ご家族に気をつかいすぎる患者さんには、「常に本音で話してください」と伝えています。つらいときはつらい、元気なときは元気、かまってほしいときはかまってほしいと、常に本音で話せば、余計な推測をせずにすみ、お互いに気が楽になります。むしろ正直に自分の体調や感情を伝えることが、長い闘病生活ではご家族への気づかいなのかなと思います。

最後に、患者さんやそのご家族へメッセージをお願いします。

化学療法に対して、副作用がつらいという昔ながらのイメージを持っている方もいらっしゃると思いますが、今では抗がん剤も進歩しており、副作用を和らげる薬もあります。そして、外来で治療をしていたとしても何かあれば病院でいつでも対応できる体制を整えていますので、安心して外来化学療法を受けていただければと思います。また、わからないことは理解できるまで医師や薬剤師、看護師などから説明を聞き、納得したうえで治療を受けてほしいと思います。

がんになって不安になることや、副作用を心配するのは、どの患者さんやご家族も同じです。泣きたいときは泣き、つらいときはつらいと言ってください。感情を抑えすぎると心の病気になりかねません。医療スタッフはそんな患者さんやご家族の言葉をきちんと受け止めますので、どんなことでも相談していただければと思います。

【お話をうかがった先生】

神戸市立医療センター中央市民病院
外来師長
濱田麻美子先生

  • 神戸市看護大学大学院 修了
  • がん看護専門看護師
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